「エスプレッソ用」と書かれたコーヒー豆に、専用の品種や業界共通の規格があるわけではありません。メーカーの説明を突き合わせると、決め手は焙煎度・ブレンドの配合・挽き目の3つで、どこまで焙煎するかは中煎りから深煎りまでメーカーによって幅があります。
この記事では、全日本コーヒー協会・UCC上島珈琲・キーコーヒーの解説と、デロンギなどのマシンの取扱説明書をもとに、エスプレッソに向く豆の条件と器具別の選び方を整理しました。後半では、市販で買えるエスプレッソ向けの豆・粉7商品を、メーカー公式の焙煎度・内容量・価格で比べています(価格は2026年10月6日時点)。
- 「エスプレッソ用」の豆の正体と焙煎度の幅
- 全自動・セミオート・マキネッタ・カプセル式ごとの選び方
- 市販で買えるエスプレッソ向けの豆・粉7商品の比較
- 開封後の豆とマシンに入れた豆の保存


エスプレッソ用のコーヒー豆とは?専用の品種はない
エスプレッソは、極細挽きの粉に圧力をかけて短時間で抽出するコーヒーです。全日本コーヒー協会は、約9気圧の圧力で1杯分(25〜35mL)を20〜30秒で抽出する方法として紹介しています。エスプレッソそのものとドリップとの違いは「エスプレッソとは?ドリップとの違いとラテ・カプチーノなど種類一覧」で解説しています。
品種ではなく用途を表す呼び名
UCC上島珈琲の解説では、エスプレッソに使う豆はアラビカ種100%のブレンドが多く、ロブスタ種を使う場合も少量に抑えるとされています。つまり「エスプレッソ用」は豆の種類の名前ではなく、エスプレッソで淹れることを想定して焙煎・配合された商品につく呼び名です。
そのため、エスプレッソ用の豆はほかの淹れ方にも使えます。イリーはエスプレッソ用の豆を中挽きにすればドリップでも楽しめると案内しており、デロンギの取扱説明書も「エスプレッソ用として売られているもの」と並べて「やや深煎りのコーヒー豆」を挙げています。
ブレンドが多い理由
UCC上島珈琲は、単一品種の豆で抽出すると特徴がはっきり出てしまうことがあるため、エスプレッソには主にブレンドを使うと説明しています。イリーは9種類のアラビカ種を独自のレシピで配合し、キンボの「ナポリ」はアラビカ種とロブスタ種を組み合わせています。
この記事の後半で紹介する7商品のうち、産地や配合を公表している6商品は、いずれも複数の産地・地域の豆を使っています。
メーカーで幅がある焙煎度
エスプレッソといえば深煎りという印象がありますが、メーカーの説明を並べると、エスプレッソ向きとする焙煎度には幅があります。
| 出典 | エスプレッソ向きとしている焙煎度 |
|---|---|
| UCC上島珈琲 | 中炒りと深炒りの中間(浅すぎると渋味や酸味、深すぎると焦げ臭さや苦味が強くなる傾向) |
| キーコーヒー | 中煎り〜極深煎り(一部浅煎りもある) |
| デロンギ マグニフィカS(現行 ECAM22112)の取扱説明書 | エスプレッソ用として売られているもの、またはやや深煎り(ハイロースト、シティロースト、フルシティローストなど) |
| デロンギ マグニフィカS(旧型 ECAM22110SBHN)の取扱説明書 | エスプレッソ用として売られているもの、またはやや深煎り(シティロースト、フルシティロースト、フレンチロースト、イタリアンローストなど) |
| スターバックス | 定番の「エスプレッソ ロースト」は同社区分のダークロースト。浅めの「ブロンド エスプレッソ ロースト」も販売 |
焙煎度の名前は、浅い順にライト、シナモン、ミディアム、ハイ、シティ、フルシティ、フレンチ、イタリアンの8段階で呼ばれます(キーコーヒー)。同じデロンギのマグニフィカSでも、旧型の説明書はシティ〜イタリアン、現行の説明書はハイ〜フルシティを例に挙げており、例示の範囲が浅い側へ移っています。
決まった正解があるというより、好みで選べる幅があると考えると選びやすくなります。苦味とコクを強めたいなら深煎り寄り、酸味も感じたいなら中煎り寄りの商品が候補です。
極細挽きが基本の挽き目
エスプレッソマシンで抽出するなら、挽き目は極細挽きが基本です。全日本コーヒー協会は、粒を細かくすると湯に触れる表面積が増え、短時間の抽出でもコクや甘味などの旨味が凝縮されると説明しています。
ただし、デロンギは挽いてある粉を使う場合「極細挽きや細挽き」が適するとしており、極細挽きだけが正解ではありません。UCC上島珈琲も、豆の種類や状態に合った挽き目を見極める必要があるとしています。
袋の一括表示では、品名の「レギュラーコーヒー(豆)」「レギュラーコーヒー(粉)」で豆か粉かを見分けられます。挽き方は任意の表示で、粗挽き・中挽き・中細挽き・細挽き・極細挽きの5種類で書かれます(全日本コーヒー協会)。
エスプレッソ豆の選び方は器具で変わる
同じエスプレッソでも、使う器具によって豆で買うか粉で買うか、どの挽き目を選ぶかが変わります。器具ごとの要点を先に表にまとめました。
| 器具 | 買う形 | 挽き目 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| 全自動マシン | 豆(粉を使える機種もある) | マシンが挽く | 油分が多すぎる豆を避ける、フレーバーコーヒーは粉で使う |
| セミオート・手動マシン | 粉、またはグラインダーで挽く豆 | 極細挽き〜細挽き | タンピングの強さで濃さが変わる、カフェポッド対応の機種もある |
| マキネッタ(直火式) | 粉 | 中細挽き(電気式マシン用の極細挽きは詰まりやすい) | 粉を押し固めない |
| カプセル式マシン | カプセル | なし | マシンの方式に合う専用カプセルを選ぶ |


全自動マシンで使う豆
全自動マシンは本体で豆を挽くため、豆のまま買うのが基本です。デロンギ マグニフィカS(ECAM22112)の取扱説明書は、エスプレッソ用として売られている豆か、やや深煎りの豆を勧めています。
同じ説明書には、豆についての注意が3つ書かれています。過度に油分の多い豆はグラインダーに引き込まれにくくなるため使用を避けること、フレーバーコーヒーは挽いた粉で使うこと、焙煎していない生豆は使えないことです。
油分については、旧型の説明書(ECAM22110SBHN)には、焙煎が深くなるほど豆の表面に油分が浮き上がる場合があると書かれています。その油で豆が豆ホッパーに付き、グラインダーに引き込まれないときは、乾いたふきんでホッパーを拭くよう案内されています。
ミル付きのドリップ式コーヒーメーカーでも事情は似ています。パナソニックは、アイスコーヒー用やエスプレッソ用などの深煎りの豆は油分が多く豆容器に付きやすいため、毎回手入れをするよう案内しています。
全自動マシンでも、機種によっては挽いてある粉を使えます。デロンギのよくある質問では、エスプレッソ(マシン)用と表記された極細挽き〜細挽きの粉が最適とされています。マグニフィカSの使い方と手入れは「デロンギ マグニフィカSとは|モデルの違い・使い方・お手入れを解説」にまとめています。
セミオート・手動マシンで使う豆と粉
セミオートや手動のマシンは、粉をフィルターに詰めて押し固め(タンピング)、抽出します。グラインダーを持っていなければ、最初から極細挽きの粉を買うことになります。
デロンギのエスプレッソ・カプチーノメーカー(EC860M)の取扱説明書は、エスプレッソ用として売られている粉か、やや深煎りの豆の極細挽き・細挽きを使うよう書いています。タンピングを強めると濃く、弱めると薄くなるとも説明しています。
この機種は、粉のほかに「カフェポッド(E.S.E用)」にも対応しています。説明書では、カフェポッドを深煎りの豆を極細挽きにして1杯分ずつプレスパックしたもの、と説明しています。イリーにも、44mmのE.S.E規格のポッドがあります。
マキネッタ(直火式)で使う粉
直火にかけて蒸気の圧力で抽出するマキネッタには、電気式マシン用ほど細かくない粉が向きます。ビアレッティのニュージーランド公式サイトは、電気式エスプレッソマシン用に売られている挽き目はたいてい細かすぎて詰まるおそれがあるとし、中細挽きを勧めています。粉は押し固めないよう案内しています。
メーカーも挽き目を分けて売っています。イリーには、エスプレッソ用の極細挽きの粉とは別に、モカポット(マキネッタ)での抽出に適した「モカ」用の粉があります。マキネッタの仕組みと淹れ方は「マキネッタとは?仕組み・使い方・エスプレッソとの違いをやさしく解説」で解説しています。
カプセル式マシンで使うカプセル
カプセル式は、豆や粉ではなく、マシンに合うカプセルを選ぶ方式です。ネスプレッソの「ヴァーチュオ ポップ」の取扱説明書には、本機はヴァーチュオのカプセル専用で、ほかのネスプレッソやネスレのカプセルは使わないよう書かれています。
ネスカフェ ドルチェ グストも、取扱説明書で専用カプセルを使うコーヒーメーカーだと説明しています。同じメーカーでも方式が違えばカプセルは共通ではないため、マシンの型番に対応したカプセルかを確かめてから買います。
市販で買えるエスプレッソ向けの豆・粉おすすめ7選
ここからは、日本で一般に買えるエスプレッソ向けの豆・粉を7つ紹介します。いずれもメーカーや販売元の公式サイトで、商品と取り扱いを確認できたものです。
味についての記述は、すべてメーカーの説明によるものです。価格は各社の公式オンラインストアや商品ページの表示(税込、2026年10月6日時点)で、店頭では異なる場合があります。
| 商品 | 焙煎度(メーカー表記) | 形状 | 内容量 | 価格(税込) | 産地・配合 |
|---|---|---|---|---|---|
| イリー イリーブレンド エスプレッソ クラシコ | ミディアムロースト | 豆・粉(極細挽き) | 250g | 2,538円 | アラビカ種9種類のブレンド |
| イリー イリーブレンド エスプレッソ インテンソ | ダークロースト | 豆 | 250g | 2,538円 | アラビカ種9種類のブレンド |
| キンボ エスプレッソ ナポリ | ミディアム | 豆・粉(極細挽き) | 250g | 1,982円 | アラビカ種とロブスタ種のブレンド(ブラジル、ペルー、インド他) |
| スターバックス エスプレッソ ロースト | ダークロースト | 豆 | 250g | 1,590円 | 複数地域のブレンド |
| タリーズ エスプレッソクラシコ | 記載なし | 豆 | 200g | 1,580円 | グァテマラ、コスタリカ他 |
| ドトール イタリアンエスプレッソ | 記載なし | 豆 | 200g | 1,210円 | 記載なし |
| カルディ エスプレッソブレンド | 深煎り | 豆(注文時に極細挽きも選べる) | 200g | 1,382円 | ブラジル、インドネシア他のブレンド |
このほか、ラバッツァも候補でしたが、日本の公式サイトでは豆・粉とも「現在、この商品はご注文いただけません」と表示されていたため(2026年10月6日確認)、表には入れていません。
イリー イリーブレンド エスプレッソ クラシコ
イタリアのイリーの定番ブレンドで、日本ではキーコーヒーが正規代理店として販売しています。メーカーは、9種類のアラビカ種を独自のレシピで配合したミディアムローストで、酸味と苦味のバランスがよく、甘く花のような香りが特徴と説明しています。
豆と、エスプレッソに適した極細挽きの粉があり、どちらも250gで2,538円です。豆は缶入りで、賞味期間は製造日から24か月とされています。
イリー イリーブレンド エスプレッソ インテンソ
同じイリーブレンドのダークローストです。メーカーは、深く力強いコクのある濃厚な味わいで、牛乳との相性もよく、カプチーノやカフェラテにも向くと説明しています。豆の250gで2,538円です。
キンボ エスプレッソ ナポリ
キンボは、ナポリで1940年に開いた小さなカフェから始まったエスプレッソのブランドです。日本では、モンテ物産直営のオンラインショップ「カ・モンテ」で扱っています。
「ナポリ」はアラビカ種とロブスタ種をバランスよく配合したミディアムローストで、メーカーは濃厚でフルボディのコクと、チョコレートのような風味があると説明しています。豆と極細挽きの粉があり、どちらも250gで1,982円です。7商品のなかで、ロブスタ種を使うと明記しているのはこの商品だけです。
スターバックス エスプレッソ ロースト
スターバックスがエスプレッソドリンクのベースとして世界中で使っている味わいの豆です。メーカーは、濃厚なモラセスやキャラメルのような甘みと風味が特徴で、ミルクとの相性がよいと説明しています。
焙煎度は同社区分のダークローストで、複数の地域の豆のブレンドです。公式オンラインストアでは豆の250gが1,590円で、ほかの抽出方法でも楽しめると案内されています。浅めが好みなら「ブロンド エスプレッソ ロースト」もありますが、量り売りのみの販売です。
タリーズ エスプレッソクラシコ
タリーズコーヒーのエスプレッソ向けの豆で、原産地はグァテマラ、コスタリカなどです。メーカーは、リッチなボディと甘く華やかな香りが印象的で、エスプレッソのほかラテやカプチーノのベースにも向くと説明しています。200gで1,580円です。
ドトール イタリアンエスプレッソ
ドトールコーヒーショップのコーヒー豆のひとつです。メーカーは、深みのあるビターチョコレートのようなコクと、アーモンドのような香ばしさが、ミルクの甘味を引き立てると説明しています。200gで1,210円で、焙煎度と産地は商品ページに書かれていません。
カルディ エスプレッソブレンド
カルディコーヒーファームの深煎りのブレンドで、生豆の生産国はブラジル、インドネシアなどです。メーカーは、強いボディと長く続く芳醇なアロマが特徴で、カフェオレにも向くと説明しています。
公式オンラインストアでは、豆のままのほか「エスプレッソ用(極細挽き)」など挽き方を選んで注文でき、200gで1,382円です。カルディのほかの豆は「カルディのおすすめコーヒー豆10選」で紹介しています。
エスプレッソ豆の保存|開封後とマシンに入れた豆
エスプレッソ用の豆も、保存の基本はほかのレギュラーコーヒーと同じです。全日本コーヒー協会は、開封すると香りの成分が散逸しやすく、吸湿や酸化が進むため、きっちり閉めて冷暗所で保存するのが基本としています。
開封後の保存方法
開封後の保存場所の案内は、商品によって異なります。イリー(キーコーヒー)は開缶後は冷蔵庫などで保存して早めに使うよう、カ・モンテはキンボの豆・粉を開封後は密閉して冷蔵庫で保存するよう案内しています。
賞味期限の長さも商品ごとに違います。イリーの豆は製造日から24か月、スターバックスはオンラインストアで賞味期限が50日以上あるものを発送するとしています。カルディは、賞味期限に関わらず早めに飲むよう呼びかけています。
挽いた粉の扱いには、さらに気を配ります。UCC上島珈琲は、極細挽きは劣化が早いため必要な量だけ挽き、酸化を防ぐため抽出の直前に挽くと説明しています。
豆ホッパーに残った豆の扱い
全自動マシンの豆ホッパーに豆を入れたままにする場合について、デロンギはマグニフィカS(ECAM22112)の説明書で、ふたにある程度の遮光性と密閉性があるのでそのままでよいが、3日以内に使うのがおすすめとしています。数日で飲みきれない量は、ホッパーに入れずに袋や容器で保存しておくと管理しやすくなります。


冷凍・冷蔵した豆を使うときの注意
冷凍・冷蔵した豆をマシンで使うときは、結露に注意します。デロンギの旧型の説明書は、冷凍庫や冷蔵庫に入れていた豆は室内にしばらく置き、室温に戻してから使うよう書いています(故障の原因になるため)。パナソニックは、冷凍した豆をすぐ常温に戻すと結露しやすいため、冷蔵室でゆっくり自然解凍するよう勧めています。
よくある質問
エスプレッソ用の豆について、よく出る疑問に公式情報の範囲で答えます。
エスプレッソ用の豆でドリップしてもいいですか?
使えます。イリーはエスプレッソ用の豆を中挽きにすればドリップでも楽しめると案内しており、スターバックスもエスプレッソ ローストをほかの抽出方法でも楽しめる味わいとしています。ドリップに使うときは、挽き目をドリップ用に合わせます。
ドリップ用の粉はエスプレッソマシンに使えますか?
デロンギは、粉を使う場合は極細挽き〜細挽きが適するとしています。キーコーヒーの解説ではドリップ用の挽き方は細挽き〜荒挽きとされており、粉で買うならエスプレッソ用と表示されたものを選ぶのが確実です。豆で持っているなら、極細挽き〜細挽きに挽けば使えます。
全自動マシンにエスプレッソ用の粉を入れてもいいですか?
粉に対応した機種なら使えます。デロンギは全自動マシンでもコーヒー粉を使えるとし、エスプレッソ(マシン)用と表記された極細挽き〜細挽きの粉が最適と案内しています。粉は豆ホッパーではなく、「コーヒー粉からの抽出」を選んでからパウダー投入口に入れます。
カフェインレスのエスプレッソ用の豆はありますか?
あります。イリーの「イリーブレンド エスプレッソ デカフェ」は豆の250gで2,538円(2026年10月6日時点)で、メーカーは液体二酸化炭素抽出法でカフェインを取り除いたと説明しています。









