シンガポールを歩いていると、金色の看板を掲げた「Bacha Coffee(バシャコーヒー)」に、何度も出くわします。空港にも、主要なショッピングモールにも、当たり前のように入っている。日本では銀座に1店舗あるだけのブランドが、あちらでは日常の風景に溶け込んでいます。
これは偶然ではありません。バシャコーヒーは、シンガポールを本拠地とする企業が展開しているブランドだからです。モロッコ生まれなのにシンガポールに多い、という一見ちぐはぐな状況には、はっきりした理由があります。
なお、この記事の写真は当サイト編集長の田中が現地で撮影したものです。
この記事でわかること
- シンガポールにバシャコーヒーが多い理由
- モロッコ発のブランドがシンガポールで再出発した経緯
- 「コーヒールーム」と「ブティック」の違い
- 日本(銀座店)とシンガポールで、体験がどう変わるか
なお日本語では「バシャコーヒー」「バチャコーヒー」の両方の表記が使われています。どちらも同じ Bacha Coffee のことです。この記事では、日本の運営会社が使う「バシャコーヒー」に統一します。
目次
シンガポールでバシャコーヒーをよく見かける理由
答えはシンプルで、ブランドを運営する企業の拠点がシンガポールにあるからです。
バシャコーヒーを展開しているのは、シンガポールを本拠とする V3 Gourmet。高級茶ブランドの TWG Tea を手がけたことで知られる企業グループです。2019年にブランドが本格的に再始動したとき、その最初の拠点になったのがシンガポールでした。
つまりシンガポールは、バシャコーヒーにとって海外展開の出発点であり、実質的な本拠地です。日本でいえば、地元発祥のチェーンが地元に集中して出店しているのと同じ構図で、ここに店が多いのはむしろ自然なことといえます。
実際に街を歩くと、オーチャード周辺の大型モール、マリーナ・ベイ・サンズ、そしてチャンギ空港と、人の集まる場所に繰り返し現れます。旅行者にとっては「探さなくても見つかる」ブランドです。
対岸から見たマリーナ・ベイ・サンズ。ここにもバシャコーヒーの店舗が入っている(撮影:当サイト編集長 田中)
バシャコーヒーとは|モロッコ発、シンガポールで再出発したブランド
ブランドの起点は、モロッコ・マラケシュの旧市街にあるダール・エル・バシャ(Dar el Bacha)という建物です。公式サイトの説明によれば、1910年に建てられたこの邸宅の名は「パシャの家」を意味し、当時の文化人や政治家がアラビカコーヒーを囲んだ場所だとされています。
その後、コーヒールームは長く閉ざされていました。公式サイトは「60年にわたって閉じられていた」と記しています。転機は2017年で、ダール・エル・バシャが博物館として再公開され、その一角でブランドが復活。2019年に本格的に再始動しました。運営は前述の V3 Gourmet で、CEO はタハ・ブクディブ氏です。
コーヒーそのものの特徴は、世界35の産地から集めた200種類以上の100%アラビカ種という品揃えです。これは公式サイトと、日本でフランチャイズを担う東急グルメフロントの発表の双方に記載があります。
200種類という数は、一般的なコーヒー店の感覚からするとかなり異例です。産地ごとの違いを飲み比べたい人にとっては、それ自体が目的になり得る規模といえます。
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「コーヒールーム」と「ブティック」は別物
訪れる前に知っておくと迷わないのが、店舗に2つの種類があることです。公式サイトは両者を明確に書き分けています。
| 種類 | できること |
|---|
コーヒールーム (Coffee Room) | 座って飲む。独自の抽出方法で淹れたコーヒーと、終日提供される食事メニューを楽しめる |
コーヒーブティック (Coffee Boutique) | 豆やパッケージを買う。35産地・200種類以上のコレクションから選べる |
ここが重要で、すべての店で座って飲めるわけではありません。物販だけのブティックや、テイクアウト中心の店舗も存在します。「せっかく来たのに席がなかった」を避けるには、行きたい店舗がどちらなのかを公式サイトの店舗検索で確認しておくのが確実です。
お土産目当てであれば、ブティックだけでも十分に成立します。缶入りのコーヒーやドリップバッグは持ち帰りやすく、包装も贈り物向きです。
シンガポールと日本(銀座店)はここが違う
日本では2025年12月11日、東京・銀座に日本初の旗艦店が開業しました。運営は東急グルメフロントで、バシャコーヒー側とフランチャイズ契約を結んでいます。
ただし、シンガポールと日本では体験がかなり違います。最大の差は「店舗数」と、それに伴う混雑です。
| シンガポール | 日本 |
|---|
| 店舗の数 | モール・空港など複数 | 銀座の1店舗(旗艦店) |
| 入りやすさ | ふらっと立ち寄れる | 時間帯によって待ち時間が出る |
| 予約 | 店舗により異なる | 受け付けておらず先着順 |
| 位置づけ | 日常の選択肢のひとつ | 目的地としての一軒 |
銀座店は銀座5丁目にあり、1階がブティックとテイクアウト、2階と3階がコーヒールームという構成です。席数は40席ほどとされ、営業時間は11時から21時。開業から日が浅いこともあって、時間帯によっては入店までに待つことがあります。
裏を返せば、シンガポールに行く機会があるなら、待たずに体験できる可能性が高いということです。空港にも店舗があるため、帰国前の時間で立ち寄るという選び方もできます。
チャンギ空港に隣接する商業施設ジュエルの屋内滝。空港内にもバシャコーヒーの店舗がある(撮影:当サイト編集長 田中)
なお営業時間・予約の可否・席数といった運用は変わることがあります。訪問前に公式サイトで最新の情報を確認してください。
値段について、正直に書いておきます
「シンガポールだと安いのでは」と考える人は多いのですが、バシャコーヒーは現地でも高価格帯のブランドです。日常使いのカフェチェーンと同じ感覚の価格ではありません。
具体的な金額をここに書くことは、あえて避けます。為替と価格改定で数字がすぐ古くなり、それを見て来店した人に不利益が出るためです。正確な価格は、公式サイトか店頭のメニューで確認してください。
そのうえで、判断の目安になる考え方をひとつ。このブランドの価値は、「1杯の安さ」ではなく「200種類から選べること」と「その場の設え」にあります。産地違いを飲み比べたい人、贈り物を探している人には投資に見合いますが、日常のカフェ代わりを探しているなら、選択肢は他にもあります。
広がり方から見る、このブランドの現在地
展開スピードは、数字で見るとよくわかります。
東急側が日本進出を発表した2024年12月の時点では、バシャコーヒーは11の国と地域で27店舗を運営していると記載されていました。それが2026年8月現在、公式サイトの店舗検索で選べる国と地域は16に増えています。モロッコ、シンガポールに加え、韓国、タイ、マレーシア、インドネシア、フランス、UAE、サウジアラビアなどが並びます。
1年半あまりで対象地域が5つ増えた計算で、日本の銀座店もこの拡大の流れのなかにあります。シンガポールで「やたら見かける」という体感は、拡大の中心地にいたからということでもあります。
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よくある質問
- バシャコーヒーはどこの国のブランドですか?
-
発祥はモロッコです。マラケシュのダール・エル・バシャという1910年建造の邸宅が起点とされています。ただし現在ブランドを運営しているのは、シンガポールを本拠とする V3 Gourmet です。「モロッコ発祥、シンガポール発展」と整理すると分かりやすいでしょう。
- シンガポールにバシャコーヒーは何店舗ありますか?
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主要なショッピングモールや空港など複数の場所にあり、街なかで見かける頻度は高いです。ただし店舗は開業・改装で変動するため、正確な数と場所は公式サイトの店舗検索で確認してください。座って飲めるコーヒールームか、物販中心のブティックかも、そこで判別できます。
- 「バチャコーヒー」と「バシャコーヒー」はどちらが正しいですか?
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いずれも同じ Bacha Coffee を指す日本語表記です。検索ではどちらも使われていますが、日本で店舗を運営する東急グルメフロントは「バシャコーヒー」を用いています。日本国内での表記は「バシャコーヒー」に合わせるのが無難です。
- 日本の銀座店はいつオープンしましたか?
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2025年12月11日に、東京・銀座5丁目で開業しました。日本初の旗艦店で、1階がコーヒーブティックとテイクアウト、2階と3階がコーヒールームという構成です。予約は受け付けておらず先着順のため、混み合う時間帯は待つ場合があります。
- お土産にするなら何を選べばよいですか?
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持ち運びと日持ちを考えると、缶入りのコーヒー豆やドリップバッグ形式の商品が扱いやすいです。相手がコーヒーを淹れる習慣を持っているかで選び分けるとよく、器具を持たない相手にはドリップバッグ形式が無難です。購入だけならコーヒーブティックで完結します。
まとめ
シンガポールでバシャコーヒーをよく見かけるのは、そこがブランドの本拠地だからです。モロッコで生まれ、長い休止を経て、2019年にシンガポールから再出発した——その経緯を知っていると、街で何度も金色の看板に出くわす理由が腑に落ちます。
訪れる前に押さえておきたいのは3点です。座って飲めるのはコーヒールームのある店舗に限られること、現地でも高価格帯であること、そして日本では銀座の1店舗しかなく、予約ができないこと。この違いを知っていれば、どちらで体験するかを選べます。
200種類という品揃えは、産地による味の違いを知るうえで恵まれた環境です。どの産地が自分に合うのかを言葉にできるようになると、こうした店での選び方は一段と楽しくなります。
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