タンパーは、エスプレッソマシンのフィルター(バスケット)に入れたコーヒー粉を押し固める道具で、押し固める作業を「タンピング」と呼びます。粉を平らにならし、水平に、毎回同じ力で押す。マシンメーカーの取扱説明書やガイドが繰り返し挙げるのは、この3点です。
力の目安は「15〜20kg」とよく書かれますが、出どころをたどると一部のマシンメーカーの取扱説明書で、バリスタの競技会規則には数字がありません。この記事では、デロンギやブレビルの取扱説明書、マシン・道具メーカーの公式情報、競技会の規則をもとに、タンピングの手順と力の目安、タンパーのサイズと形の選び方を整理しました(2026年10月時点)。
- タンパーの役割とタンピングが要らないマシン
- 取扱説明書に沿ったタンピングの手順
- 力の目安と、出典ごとの数字の違い
- 押し方の失敗と味・クレマへの出方
- バスケットの内径に合うサイズ、底面の形と素材
エスプレッソのタンパーとは?粉を押し固める道具
UCCのコーヒー用語辞典は、タンピングを、フィルターに入れた粉に圧力をかけながら水平に押し固める作業と説明しています。その作業に使う道具がタンパーです。マシンに付属するもののほか、道具メーカーが単体で売っているものもあります。
フィルターは、マシンに取り付ける取っ手つきの器具にはめて使います。この器具を英語圏のメーカーは「ポータフィルター」、デロンギの日本語の取扱説明書は「フィルターホルダー」と呼んでいます。
押し方で変わる抽出の濃さと時間
デロンギのデディカ アルテ(EC885J)の取扱説明書は、エスプレッソの味を左右する要素として「コーヒー粉の量」「押し詰め具合」「豆の挽き具合」の3つを挙げています。押し詰める力が強いほど抽出は濃く、時間は長くなり、弱いほど薄く、短くなります。
| 条件 | 濃さ | 抽出時間 |
|---|---|---|
| 粉が多い・押し詰めが強い・挽きが細かい | 濃くなる | 長くなる |
| 粉が少ない・押し詰めが弱い・挽きが粗い | 薄くなる | 短くなる |
タンピングだけで味が決まるわけではなく、粉の量・挽き目と組み合わせて調整する要素の一つです。エスプレッソそのものの仕組みは「エスプレッソとは?ドリップとの違い」で解説しています。
タンピングが要らないマシンと器具
自分でタンピングするのは、粉を手で詰めるタイプ(セミオート)のエスプレッソマシンです。全自動のコーヒーマシン、カフェポッド、直火式のマキネッタでは、タンパーを使いません。
| 器具 | タンピング | メーカーの案内 |
|---|---|---|
| セミオートのエスプレッソマシン | 自分でする | 粉を均等にならし、タンパーで押し詰める(デロンギ) |
| 全自動コーヒーマシン | マシンの中で行う | 豆を挽き、タンピングし、抽出する(デロンギ マグニフィカS) |
| カフェポッド(1杯分の粉を紙で包んだもの) | しない | ポッドをフィルターにセットして抽出する(デロンギ) |
| マキネッタ(直火式) | しない | 粉は押さずにバスケットへ入れる(ビアレッティ) |
デロンギはマグニフィカSの製品ページで、豆を挽いてタンピングし、抽出するまでを本体が行うと説明しています。全自動機の使い方は「デロンギ マグニフィカSとは」にまとめました。
マキネッタについては、メーカーのビアレッティが粉を押し固めないよう案内しています。押すとお湯が粉を通りにくくなるためです。マキネッタの使い方は「マキネッタとは?」で紹介しています。


エスプレッソのタンピングのやり方|取扱説明書の手順
タンピングの手順は、メーカーによって言葉は違っても流れは同じです。デロンギとブレビルの取扱説明書、ラ・マルゾッコの家庭向けガイドに書かれている手順を、順番に並べました。
| 順番 | すること | 取扱説明書・ガイドの記載 |
|---|---|---|
| 1 | バスケットの水気を拭く | 粉を入れる前に乾いた状態にする(ブレビル、ラ・マルゾッコ) |
| 2 | 粉を入れる | 量は機種とフィルターで違う(デロンギ) |
| 3 | 粉を平らにならす | 手でトントンとたたいて均等にならす(デロンギ) |
| 4 | 水平に押し固める | タンパーを使って押し詰める(デロンギ) |
| 5 | 粉の量を確かめる | 押した後に量を確認して増減する(デロンギ)、余分は専用の道具で削る(ブレビル) |
| 6 | 縁の粉を払う | 縁の粉はお湯が漏れる原因になる(デロンギ) |
| 7 | マシンに取り付けて抽出する | 取り付ける前に抽出口からお湯を少し流す(ブレビル) |
粉の量を取扱説明書で確かめる
入れる粉の量は、同じメーカーでも機種とフィルターによって違います。デロンギの日本向けの取扱説明書では、次の量が目安になっています。
| 機種 | 1杯用 | 2杯用 |
|---|---|---|
| デディカ アルテ(EC885J) | 約9g | 約15g |
| スティローザ(EC235J) | 約8〜10g | 約12〜14g |
| ラ・スペシャリスタ・アルテ(EC9155J) | 約12g | 約20g |
ブレビルの Barista Express の取扱説明書は、押し固めた後に、付属タンパーの金属部分の上端がバスケットの縁と同じ高さになることを量の目安にしています。粉が多ければ、付属の「Razor」という道具で表面を削って量をそろえます。
粉を平らにならしてから押す
押す前に、粉の山を平らにします。デロンギのラ・スペシャリスタ・アルテの取扱説明書は、フィルターホルダーを手でトントンとたたいて均等にならす手順です。ブレビルも、ポータフィルターを数回たたいて粉を沈め、均一に広げるよう書いています。
ラ・マルゾッコの家庭向けガイドでは、指をバスケットの上に平らに当て、前後左右に動かしてならす方法を紹介しています。ならすための専用の道具もあり、後の章で紹介します。
水平に押し、縁の粉を払う
ならした粉に、タンパーをまっすぐ当てて押します。ラ・マルゾッコのガイドは、できるだけ均一に水平に押すことと、粉が押し返してくる感覚があれば十分で、やりすぎなくてよいことを挙げています。
押し終えたら、バスケットの縁についた粉を払います。デロンギの取扱説明書は、縁の粉がお湯の漏れる原因になると注意しています。ブレビルも、マシンとの密閉のために縁の粉を拭き取るよう書いています。


タンピングの力の目安は?「15〜20kg」の出どころ
タンピングの力を数字で示しているのは、マシンメーカーの一部です。数字は出典によって違い、数字を示した出典はどれも「毎回同じ力で」「均一に」押すことを合わせて挙げています。
| 出典 | 示している力 | 一緒に書かれていること |
|---|---|---|
| ブレビル(Barista Express ほかの取扱説明書) | 約15〜20kg(30〜40ポンド) | 力の大きさより、毎回同じ力で押すこと |
| ECM(ドイツのマシンメーカー)のよくある質問 | 約15〜20kg | 粉を均一に押し固めること |
| ラ・マルゾッコ(家庭向けのガイド) | 20〜30ポンド(約9〜14kg) | 何より一貫させること |
| デロンギ(日本向けの取扱説明書) | 数字なし | 「押し詰めます」、機種によって「軽く押します」 |
| 世界バリスタ選手権の競技規則(2026年) | 数字なし | 粉を均等に分配し、適切な力で水平に押す |
よく見る「15kg」「20kg」は、ブレビルやECMの約15〜20kgと重なります。一方、ラ・マルゾッコの20〜30ポンドは約9〜14kgで、それより軽めです。調べた範囲では、目安はメーカーによって違い、ひとつの正解は見つかりませんでした。
スペシャルティコーヒー協会(SCA)の機関誌『25』が2018年に掲載したバリスタへのアンケートでは、多くの回答者が20〜30ポンドでした。ただし22%は「その他」と答え、測ったことがない、機械で押している、粉が均一な密度になるまで押す、といった内容だったと報告されています。
競技会にも数字の決まりはありません。世界バリスタ選手権の規則は、一貫した方法で粉を詰めて押すことと、適切な力で水平に押すことを求めています。日本スペシャルティコーヒー協会が主催するジャパンバリスタチャンピオンシップの規則も同じ内容です。
一定の力で押す機能つきのマシン
手で押す力を気にしなくてよいように、タンピングを機械で行うセミオート機もあります。ブレビルの Barista Express Impress は、レバーを下ろすと10kgで押し、最後に7度ひねって表面を整える仕組みです。
デロンギのラ・スペシャリスタ・プレスティージオ(EC9355J)は、レバーを下ろすと一定の圧力でタンピングする「スマート タンピング ステーション」を備えています。日本の公式サイトと取扱説明書には、その力の数値は書かれていません。
タンピングでよくある失敗と味への出方
タンピングの失敗は、味やクレマの見た目に出ます。取扱説明書の「困ったとき」の項目から、タンピングに関係するものを拾いました。
押す力が合っていない
ブレビルの取扱説明書は、押す力が足りないとお湯が速く通りすぎ、水っぽくクレマの少ない「抽出不足」になると説明しています。押しすぎると流れが遅くなり、色が濃く苦い「過抽出」になります。どちらも、挽き目や粉の量が原因でも同じことが起きます。
| 症状 | タンピングでの対処 | ほかに考えられる原因 |
|---|---|---|
| 白っぽいクレマで、すぐに消える | 押し詰める力をやや強くする | 粉が少ない、挽きが粗い、粉が古い |
| 濃い茶色のクレマで、層が薄い | 押し詰める力を弱くする | 粉が多い、挽きが細かい、フィルターの目詰まり |
クレマの色や厚みの見方は「クレマとは?エスプレッソの泡の正体と出ないときの原因」で解説しています。
斜めに押している
タンパーが傾いたまま押すと、粉の層の厚みが片側だけ薄くなります。ECMは粉を均一に押し固めるよう、ラ・マルゾッコはできるだけ均一に水平に押すよう書いていて、競技会の規則も水平なタンピングを求めています。
オーストラリアのONA Coffeeは、自社の道具の説明で、粉の密度のむらがお湯の偏った流れ(チャネリング)の原因になると説明しています。
粉の量が毎回違っている
力を一定にしても、粉の量が変われば押し固めた後の高さや抽出時間が変わります。ラ・マルゾッコのガイドはスケールで量ってから詰めることを勧め、ブレビルは押した後の高さで量を確かめ、多ければ削る手順にしています。
縁に粉が残っている
バスケットの縁に粉が残ったまま取り付けると、すき間からお湯が漏れることがあります。デロンギは、困ったときの項目でもこの状態を挙げ、取り付ける前に払い落とすよう案内しています。
コーヒータンパーのサイズの選び方|フィルターバスケットの内径に合わせる
タンパーの直径は、マシンのフィルターバスケットの内径に合わせて選びます。同じメーカーでも機種によって径が違うため、「デロンギ用」「ブレビル用」といったメーカー名だけで選ぶと合わないことがあります。
| マシン | 公式に書かれている径 | 出典 |
|---|---|---|
| デロンギ ラ・スペシャリスタ・アルテ(EC9155J) | 付属タンパー 直径49.5mm | 公式サイトのよくある質問 |
| ブレビル Bambino、Barista Express、Barista Pro、Barista Touch(Impressを含む) | ポータフィルター 54mm | 取扱説明書 |
| ブレビル Dual Boiler、Oracle | ポータフィルター 58mm | 取扱説明書 |
| ガジア Classic(E24) | フィルターホルダー 58mm | 公式サイトの仕様 |
| ランチリオ Silvia Pro | 付属タンパー 58mm(フラット) | 公式サイト |
| ラ・マルゾッコ Linea Micra | 一般的な58mmのタンパーに対応 | 公式サイト |
| ラ・チンバリ(業務用) | 純正タンパー 57.8mm(フラット) | 日本の輸入元の製品ページ |
デロンギは、日本の公式サイトや取扱説明書に、ほとんどの機種のバスケット径を載せていません(2026年10月時点で編集部が確認した範囲)。付属のタンパーがある機種はその径を基準にするか、次の方法で測ってください。
バスケットの内径を測って選ぶ
道具メーカーのNormcoreは、ポータフィルターからバスケットを外し、上端の縁で直径を測って、いちばん近いサイズを選ぶよう案内しています。タンパーはバスケットよりわずかに小さく作られていて、例えば同社の53.3mmはブレビルなどの54mmバスケット向けです。
径が大きすぎるとバスケットに入らず、小さすぎると縁とのすき間が広がります。ぴったりの数字が無いときも、測った値にいちばん近いサイズを選ぶのがNormcoreの案内です。
58mmでもタンパーの径は少しずつ違う
業務用や上位の家庭用に多い58mmでも、合うタンパーの径はバスケットによって違います。精密バスケットを作るVSTは自社のバスケットに58.40mmのフラットなタンパーを、IMSは58.4〜58.5mmを推奨しています。上の表のとおり、ラ・チンバリの純正タンパーは57.8mmです。
「58mm」と書かれたタンパーを買う前に、手元のバスケットのメーカーと、そのメーカーが勧めるタンパー径を確かめておくと、合わない買い物を避けられます。


タンパーの底面の形と素材の違い
タンパーは、径のほかに底面の形と素材で種類が分かれます。形の違いはメーカーがそれぞれの狙いを説明している段階で、どれが優れているという共通の基準はありません。
底面の形(フラット・凸・リップル)
代表的な底面の形は3つです。カナダのタンパーメーカーReg Barberなどが、形ごとの狙いを説明しています。
| 形 | 見た目 | メーカーの説明 |
|---|---|---|
| フラット | 底面が平ら | Reg Barber が「基準」と呼ぶ、長年の定番の形 |
| 凸(カーブ) | 中央がわずかにふくらむ | 粉を縁の方へ押して縁との密着を高め、チャネリングを抑える(Reg Barber) |
| リップル | 同心円の溝がある | 粉の深さの差を大きくせずに表面積を増やす(Reg Barber)、ドーナツ状の抽出を抑える(Normcore) |
VSTは自社の精密バスケットにフラットなタンパーを推奨しています。形で迷ったら、まずフラットを選んでおけば、ほかの形を試すときの比べる基準になります。
底面と持ち手の素材
Reg Barberは、底面の素材としてステンレス・銅・真ちゅう・アルミを扱ってきました。ステンレスの底面は仕上げが長持ちし、腐食に強いと説明しています。
持ち手は木やアルミなどです。ランチリオの Silvia Pro に付属するタンパーは黒い木の持ち手にステンレスの平らな底面、Normcoreの定圧タンパーはアルマイト加工のアルミの持ち手です。
タンパーと一緒に使う道具
タンピングの前後に使う補助の道具もあります。どれもタンパーの代わりではなく、ONA Coffeeも自社のディストリビューターについて、使ってもタンピングは別に必要だと説明しています。
| 道具 | 使う段階 | メーカーの説明 |
|---|---|---|
| ディストリビューター(レベラー) | 押す前 | 粉を均等に広げ、密度のむらを減らす(ONA Coffee) |
| WDTツール | 粉を入れた直後 | 細い針でダマをほぐし、下の層から上へ混ぜる(Normcore) |
| 定圧タンパー | 押すとき | 力はバネで決まり、15・25・30ポンドのバネを付け替えられる(Normcore) |
| ドーズ調整の道具(Razor) | 押した後 | 余分な粉を削り、毎回の量をそろえる(ブレビル) |
| パックスクリーン | 押した後 | 粉の上に載せてお湯を均一に行き渡らせ、マシンのシャワースクリーンの汚れを減らす(Normcore) |
| タンピングマット | 押すとき | 台とタンパーを守り、滑りや落下を防ぐ(Normcore) |
定圧タンパーのバネの15・25・30ポンドは、それぞれ約6.8kg・約11.3kg・約13.6kgです。デロンギのラ・スペシャリスタ・アルテには、タンピングガイドとタンピングマットが付属しています。
エスプレッソタンパーの選び方|確認する順番
ここまでの内容を、タンパーを選ぶときに確認する順番に並べ直しました。
| 確認すること | 見る場所 | 判断の目安 |
|---|---|---|
| 自分でタンピングする機種か | 取扱説明書 | 全自動やカフェポッドだけなら不要 |
| バスケットの内径 | 取扱説明書・付属タンパー・実測 | 測った値にいちばん近いサイズ |
| 58mmの場合の推奨径 | バスケットのメーカーの案内 | 57.8〜58.5mmの範囲で違う |
| 底面の形 | タンパーの商品説明 | 迷ったらフラット |
| 力をそろえたいか | 定圧タンパーの仕様 | バネの強さ(ポンド表記) |
付属のタンパーがバスケットに合っているなら、まずはそれで手順を固め、粉の量と押す力を毎回そろえるところから始められます。買い替えは、径が合わない、押す力がそろわないなど、困りごとがはっきりしてからでも遅くありません。
タンパーとタンピングに関するよくある質問
タンパーとタンピングについて、よく調べられている疑問に答えます。
タンピングの力は何kgが正解ですか?
決まった正解はありません。ブレビルとECMは約15〜20kg、ラ・マルゾッコは20〜30ポンド(約9〜14kg)を目安にしていて、競技会の規則には数字がありません。数字を示しているメーカーは、どれも毎回同じ力で均一に押すことを合わせて挙げています。
全自動のコーヒーマシンにタンパーは必要ですか?
必要ありません。全自動機は、豆を挽いてから粉を押し固め、抽出するまでを本体の中で行います。デロンギのマグニフィカSも、公式サイトでタンピングを含めて本体が行うと説明しています。
マキネッタでも粉を押し固めますか?
押し固めません。マキネッタのメーカーであるビアレッティは、粉をバスケットに入れたら押さないよう案内しています。押すとお湯が粉を通りにくくなるためです。
タンピングのときにタンパーを回すのはなぜですか?
粉の表面を整えるためです。デロンギのラ・スペシャリスタ・アルテの取扱説明書は、タンパーを回すと粉の表面にツヤが出て仕上がりがよくなると書いています。ブレビルの Barista Express Impress も、押した後に7度ひねって表面を整えます。









