ピーベリーとは?1粒だけ丸く育つ豆と、「オス」と呼ばれる理由

左に中央線のある平豆、右に丸いピーベリーを並べて形の違いを比べたコーヒー豆
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バリ島で、コーヒー豆を「オス」と「メス」に分けて説明されたことがあります。オスは濃い味わい、メスは酸味があって風味豊か——そう言われて飲み比べました。

コーヒーの豆に性別はありません。ではあれは何だったのか。調べてみると、「ピーベリー」と呼ばれる豆のことでした。そしてインドネシアには、これを本当に「オス」と呼ぶ言葉があります。

先に結論
  • ピーベリーは1つの実に1粒だけ丸く育った豆。通常は平たい豆が2粒向かい合って入っている
  • 品種ではなく「形」の呼び名。どの品種にも一定の割合で現れる
  • インドネシアでは「kopi lanang(コピ・ラナン)」=オスのコーヒーと呼ばれる。lanangはジャワ語で「男性」
  • 「ピーベリーのほうがおいしい」という科学的な裏づけはない。味は品種・焙煎・抽出で決まる部分が大きい
  • 「オス」のほうが希少。現地でもそう説明された。大半は通常の平豆(メス)
  • 選別で取り除かれることもあれば、集めて希少品として売られることもある
目次

ピーベリーとは?1つの実に、1粒だけ育った豆

UCC上島珈琲の用語解説には、こう書かれています。

通常、一つのコーヒーの実の中にはフラットビーン(平豆)と呼ばれる豆が2粒向い合わせで入っているが、ごくまれに形の丸い豆が混ざっており、これらはピーベリー(丸豆)と呼ばれる。

UCC上島珈琲「ピーベリーとは」

整理すると、こういうことです。

フラットビーン(平豆)ピーベリー(丸豆)
1つの実に入る数2粒1粒
片面が平ら(向かい合っているため)丸みを帯びている
できかた通常まれに起こる
位置づけ大半を占める選別されて別扱いになる

大事なのは、ピーベリーは品種名ではないということです。「ブルーマウンテン」や「モカ」のような産地・銘柄の話ではなく、豆の形についた呼び名です。だからブラジルのピーベリー、タンザニアのピーベリー、といった具合に、どの産地のものにも存在します。

なぜ1粒になるのか。コーヒーの花の受精がうまくいかず、2つあるはずの種子のうち片方が育たなかった結果とされています。片方が育たないぶん、残った1粒が実の中で丸く成長するわけです。

どのくらいの割合で現れるのかについては、情報源によって数字が異なります。「収穫量の3〜5%」とする解説もあれば、「5〜10%」と書かれているものもあります。UCCの説明では「ごくまれに」とあるだけで、具体的な比率は示されていません。数パーセント程度の希少なもの、という理解にとどめておくのが正確です。

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インドネシアでは「オスのコーヒー」と呼ばれる

冒頭の「オス・メス」の話に戻ります。あれは通訳の間違いでも、その店の造語でもありませんでした。

インドネシアでは、ピーベリーを「kopi lanang(コピ・ラナン)」と呼びます。lanang はジャワ語で「男性」を意味する言葉です。対して通常の平豆は「kopi betina(コピ・ブティナ)」=メスと呼び分けられます。

なぜ「オス」なのか。2粒に分かれず1粒で完結している形が、たくましさの連想につながったと説明されることが多いようです。そこから派生して、インドネシアには「飲むと男性の精力がつく」という言い伝えまで存在します。

ただし、これは俗信であって、根拠のある話ではありません。カフェインによる覚醒作用と結びつけて語られることはありますが、それはピーベリーに限った性質ではなく、コーヒー全般に共通するものです。

現地で聞いたところ、「オスのほうが珍しい」とのことでした。これは資料の説明とも一致します。1つの実から2粒とれるのが通常で、1粒しかできないのは例外的にしか起こらないためです。つまり「オス」は少数派で、市場に出回る大半は「メス」=通常の平豆ということになります。

とはいえ、現地で「これはオス、こちらはメス」と説明されると、豆に本当に性別があるのだと受け取ってしまいます。実際には形の違いを指す、地域に根づいた呼び方だった——ここを知っているかどうかで、現地での聞こえ方が変わります。

味は本当に違うのか

現地では「オスは濃い、メスは酸味があって風味豊か」と説明されました。飲み比べた印象としても、たしかにそう感じられる違いはありました。

ただ、正直に書いておきます。「ピーベリーだから濃い」「ピーベリーのほうがおいしい」という科学的な裏づけはありません。

味が変わる理由として挙げられるのは、次のような点です。

  • 形が違えば、焙煎時の熱の入り方が変わる。丸い豆と平らな豆では、表面積と厚みの関係が異なる
  • 粒がそろう。ピーベリーだけを集めれば大きさと形が均一になり、焙煎ムラが出にくくなる
  • 選別されている。手間をかけて選り分けた豆は、そもそも状態の良いものが残りやすい

つまり「丸いから濃い」のではなく、「そろっているから焙煎しやすい」という説明のほうが筋が通ります。そして最終的な味は、品種・産地・焙煎度・抽出方法で決まる部分がはるかに大きい。ピーベリーかどうかは、その中の一要素にすぎません。

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高級品なのか、欠点豆なのか

ピーベリーには、正反対の2つの扱いがあります。

ひとつは「規格外」としての扱いです。豆のサイズや形をそろえる選別工程では、形の違うピーベリーははじかれます。均一に焙煎したい立場からすれば、混ざっていると扱いにくいためです。

もうひとつは「希少品」としての扱いです。はじいたものを集めれば、数パーセントしかない丸い豆だけのロットができます。手間がかかるうえに量が限られるので、通常より高い値段がつきます。

どちらが正しいという話ではなく、同じ豆が、工程のどこに置かれるかで意味を変えるということです。「ピーベリー=高級」と単純に考えないほうが、実態に近い理解になります。

買うときに見ておきたいこと

ピーベリーを買ってみたい場合、確認しておくと失敗しにくい点があります。

  • 産地と品種が書かれているか。「ピーベリー」だけでは、どんな味かの手がかりになりません
  • 焙煎度が書かれているか。味の印象を左右するのは、形よりこちらです
  • 価格差に納得できるか。希少性による上乗せなので、味の保証ではありません

もっとも面白い楽しみ方は、同じ産地・同じ焙煎度のピーベリーと平豆を並べて飲むことです。条件をそろえれば、形の違いだけを取り出して比べられます。片方だけ飲んで「濃い気がする」と判断するより、はるかに確かです。

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よくある質問

コーヒー豆にオスとメスがあるって本当ですか?

生物学的な性別はありません。ただしインドネシアでは、1粒だけ丸く育った豆(ピーベリー)を「kopi lanang=オスのコーヒー」、通常の平豆を「kopi betina=メス」と呼び分ける言い方が実際にあります。lanangはジャワ語で「男性」を意味する言葉です。現地で「オス・メス」と説明されるのは、この呼び方によるものです。

ピーベリーは普通の豆よりおいしいですか?

「ピーベリーだからおいしい」という科学的な裏づけはありません。ただし粒の大きさと形がそろうため焙煎ムラが出にくく、結果として安定した味になりやすいという説明はできます。味を左右するのは品種・産地・焙煎度・抽出方法のほうが大きく、形はその中の一要素です。

ピーベリーはどれくらい希少なのですか?

収穫量の数パーセント程度とされますが、具体的な数字は情報源によって幅があります。「3〜5%」とするものもあれば「5〜10%」とするものもあり、UCC上島珈琲の解説では「ごくまれに」と表現されるにとどまっています。品種や産地、その年の条件によっても変わるため、単一の数字で語れるものではありません。

なぜ1粒だけになるのですか?

コーヒーの実には通常2つの種子が向かい合って入りますが、受精がうまくいかないなどの理由で片方が育たないことがあります。残った1粒が実の中で丸く成長したものがピーベリーです。特定の品種に限った現象ではなく、どの品種にも一定の割合で現れます。

「飲むと精力がつく」というのは本当ですか?

インドネシアにそうした言い伝えがありますが、根拠のある話ではありません。「オス」という呼び名からの連想で広まったものと考えられます。カフェインの覚醒作用と結びつけて語られることもありますが、それはコーヒー全般に共通する性質で、ピーベリーに固有のものではありません。

まとめ

ピーベリーは、1つの実に1粒だけ丸く育った豆のこと。品種ではなく形の呼び名で、どの産地にも数パーセント現れます。

インドネシアでこれを「オス」と呼ぶのは事実ですが、豆に性別があるわけではありません。1粒で完結した形からの連想で、地域に根づいた呼び名です。

そして味については、「丸いから濃い」という因果はありません。粒がそろって焙煎しやすい、選別された豆である——味の違いを説明するなら、こちらのほうが筋が通ります。

珍しい豆に出会ったとき、その珍しさが味の保証にはならないと知っておくと、選び方が落ち着きます。同じ条件で並べて飲む——確かめる方法は、いつもそれだけです。

参考にした情報

※「kopi lanang」「kopi betina」の呼称は、インドネシア語・ジャワ語の辞書および現地の複数の解説にもとづきます。発生率については情報源によって数値が異なるため、本記事では単一の数字を断定していません。

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