カフェだけの開業資金を毎年まとめた公的な統計は、編集部が調べた範囲では見つかりませんでした。いちばん近いのは日本政策金融公庫総合研究所の「2025年度新規開業実態調査」で、開業費用は全業種で中央値600万円、平均975万円です。500万円未満で開業した人が41.8%いる一方、2,000万円以上かけた人も10.0%います。
この記事では、この調査の数字と、日本政策金融公庫・中小企業庁などの公式の案内をもとに、開業資金を何に使い、どう集めるかを整理しました。資格と許可の実費(東京23区で最低30,300円)と調査の中央値を組み合わせた編集部の試算も載せています。数字はとくに断りがなければ2026年11月4日に確認したものです。
- 開業費用の中央値・平均と分布(2025年度調査)
- 設備資金と運転資金の分け方
- 自己資金と借入の割合
- 公庫の創業融資と持続化補助金<創業型>の条件
- 中央値600万円で開く場合の資金の試算(編集部)
カフェの開業資金は、全業種の中央値で600万円(2025年度調査)
日本政策金融公庫総合研究所は、1991年度から毎年「新規開業実態調査」を行っています。2025年度は、公庫が2024年4〜9月に融資した開業1年以内の企業8,517社(不動産賃貸業を除く)に2025年8月に調査票を送り、2,165社が答えました(回収率25.4%)。結果の概要は2025年12月5日に公庫のサイトでPDFとして公表されています。
| 開業費用 | 2025年度 | 2024年度 |
|---|---|---|
| 250万円未満 | 20.1% | 20.1% |
| 250万〜500万円未満 | 21.7% | 21.0% |
| 500万〜1,000万円未満 | 29.7% | 30.7% |
| 1,000万〜2,000万円未満 | 18.5% | 18.8% |
| 2,000万円以上 | 10.0% | 9.4% |
| 平均値 | 975万円 | 985万円 |
| 中央値 | 600万円 | 580万円 |
中央値の600万円は、回答者を金額の順に並べたときの真ん中の値で、半分の人はこれ以下で開業しています。平均値が中央値より375万円高いのは、金額の大きな開業が一部にあると平均が押し上げられるためです。自分の計画と比べるなら、中央値のほうが目安に向いています。
2024年度(平均985万円・中央値580万円)と比べても、水準はほとんど変わっていません。公庫は、長い目で見ると開業費用は少なくなる傾向にあると分析しています。
カフェに絞った開業費用は、概要では公表されていない
2025年度の概要には、業種別の開業費用は載っていません。開業した業種の内訳では「飲食店・宿泊業」が14.5%を占めますが、カフェ・喫茶店・レストランを分けた数字もありません。
もう一つ気をつけたいのは、回答者が全員、公庫から融資を受けた開業者だという点です。借入をせずに自己資金だけで開いた店は含まれないので、次の章で見る借入の割合は、開業者全体よりも高めに出ている可能性があります。
カフェ開業資金の使いみち:設備資金と運転資金に分ける
開業資金は、店をつくるための設備資金と、開店後に店を回すための運転資金に分けて考えます。公庫の創業計画書も必要な資金をこの2つに分けて書く形式で、公式サイトの創業計画書セルフチェックに飲食店の記入例が載っています。
| 区分 | 項目 | 記入例の金額 |
|---|---|---|
| 設備資金 | 店舗保証金 | 100万円 |
| 設備資金 | 店舗内外装費 | 300万円 |
| 設備資金 | 厨房機器等 | 150万円 |
| 設備資金 | 什器、備品 | 50万円 |
| 運転資金 | 材料費仕入 | 50万円 |
| 運転資金 | 人件費、諸経費支払資金 | 30万円 |
| 運転資金 | 初期広告費用 | 20万円 |
| 合計 | 700万円 |
記入例は書き方の見本で、実際の金額は物件の広さや立地、前の店の設備を引き継げるかどうかで変わります。公庫は同じページで、見積もりの金額が妥当かを相場調べや相見積もりで確かめたかを、確認項目に挙げています。
設備資金:内装と厨房は保健所の基準から逆算する
内装と厨房は、飲食店営業許可の施設基準を満たすようにつくる必要があります。東京都の基準では、洗浄設備(シンク)は使用目的に応じた大きさと数が求められ、手洗い設備は調理場とトイレの両方に要ります。
基準に合わない内装をつくってしまうと、工事のやり直しで設備資金がふくらみます。大阪市は、工事の前に図面を持って相談するよう案内しています。物件を決める段階で保健所に相談しておくと、見積もりの段階から基準を織り込めます。
運転資金:開業後しばらくの赤字を埋める分も見込む
運転資金は、開店直後の仕入や人件費だけでなく、売上が安定するまでの赤字を埋める分も含めて考えます。公庫のセルフチェックも、事業を始めた後の半年程度の赤字を補う資金を検討したかを確認項目にしています。
2025年度調査では、開業から平均15.5か月たった時点で採算が「黒字基調」と答えた人は67.0%、「赤字基調」は33.0%でした。開業時に苦労したこと(三つまでの複数回答)で最も多いのは「資金繰り、資金調達」の56.9%です。どちらも全業種の値ですが、開業資金に運転資金の余裕を入れておく理由になります。
資格と許可の実費:東京都なら最低3万円台で済む
開業資金のうち、資格と許可にかかるお金はごく一部です。編集部で東京都の手数料と受講料を確かめると、23区で開く場合は、飲食店営業許可の申請手数料18,300円(北区の案内)と、食品衛生責任者の養成講習会12,000円(東京都食品衛生協会の会場集合型)で、合計30,300円でした。
| ケース | 内訳 | 合計 |
|---|---|---|
| 23区・防火管理者は不要 | 飲食店営業許可18,300円+食品衛生責任者の講習12,000円 | 30,300円 |
| 23区・防火管理者が必要(乙種) | 30,300円+東京消防庁の乙種防火管理講習の教材費2,500円 | 32,800円 |
| 多摩地域など(都の保健所の管轄) | 飲食店営業許可18,000円+講習12,000円 | 30,000円 |
必要な資格と、許可・届出を出す順番は、次の記事で詳しく書いています。

カフェ開業資金の集め方:借入と自己資金で約9割
2025年度調査で、開業時に集めたお金(資金調達額)は平均1,219万円でした。内訳は、金融機関等からの借入が平均827万円(67.9%)、自己資金が279万円(22.9%)で、この2つで90.7%を占めます。
| 調達先 | 平均額 | 割合 |
|---|---|---|
| 金融機関等からの借入 | 827万円 | 67.9% |
| 自己資金 | 279万円 | 22.9% |
| 配偶者・親・兄弟・親戚 | 53万円 | 4.3% |
| 友人・知人等 | 41万円 | 3.4% |
| その他 | 19万円 | 1.6% |
| 合計 | 1,219万円 | 100% |
前の章で触れたとおり、回答者は全員が公庫から融資を受けた開業者です。借りずに開いた人が入っていない分、借入の割合は高めに出やすいことを前提に読んでください。
自己資金:公庫は借入に頼りすぎていないかを見る
公庫の新規開業・スタートアップ支援資金の案内には、自己資金をいくら用意するかという要件は書かれていません。一方で、公庫の創業計画書セルフチェックは、自己資金が少なく借入に頼った計画になっていないかを確認項目にしています。前の章の飲食店の記入例も、700万円のうち100万円を自己資金にしています。
借入:公庫の新規開業・スタートアップ支援資金は開業前から申し込める
公庫で、開業前から申し込める融資の一つが新規開業・スタートアップ支援資金です。公式ページの概要は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 使える人 | 新たに事業を始める人、または事業開始後おおむね7年以内の人 |
| 使いみち | 事業を始めるため、または事業開始後に必要な設備資金と運転資金 |
| 融資限度額 | 7,200万円 |
| 返済期間 | 設備資金は20年以内、運転資金は10年以内(どちらも据置期間5年以内) |
| 利率 | 基準利率。女性、35歳未満または55歳以上の人、特定創業支援等事業の証明書を取得した人などは特別利率 |
| 担保・保証人 | 希望を聞いたうえで相談 |
利率は、使いみちや返済期間、担保の有無などで変わると案内されています。申し込む前に、公庫の窓口で自分の条件に当てはまる利率を確かめてください。
補助金は後払い:小規模事業者持続化補助金<創業型>
開業してまもない人向けの国の補助金に、小規模事業者持続化補助金<創業型>があります。ただし、開業資金を先にもらえる制度ではありません。第4回の公募要領には、自己負担が必要で、補助金は後払いだと書かれています。
| 項目 | 第4回の内容 |
|---|---|
| 補助上限 | 200万円(インボイス特例の対象なら250万円) |
| 補助率 | 3分の2 |
| 対象になる人 | 特定創業支援等事業の支援を受けた日と開業日が、どちらも2025年12月15日〜2026年12月15日にある小規模事業者(商業・サービス業なら常時使用する従業員5人以下) |
| 対象になる経費 | 販路開拓などの取組のための機械装置等費、広報費、ウェブサイト関連費、展示会等出展費、旅費、新商品開発費、借料、委託・外注費 |
| 対象外の例 | 交付決定前の発注・支払い、保証金・敷金・仲介手数料、光熱水費、販売する商品の仕入 |
| 申請 | 2026年11月5日に受付開始、12月15日17時締切。商工会・商工会議所の事業支援計画書(発行の受付は12月4日まで)が要る |
| 採択発表 | 2027年3月頃の予定 |
編集部の計算:上限200万円を受け取るには300万円を先に払う
補助率は3分の2なので、上限の200万円を受け取るには、対象になる経費を300万円使う必要があります(300万円×3分の2=200万円)。差額の100万円は自己負担で、補助金が入るまでは300万円全額を自分で立て替えます。インボイス特例で上限が250万円になる場合は、375万円の経費に対して250万円です。
時期にも注意が要ります。第4回は2026年12月15日締切で、採択発表は2027年3月頃の予定です。公募要領によると、採択から交付決定までにさらに1〜2か月ほどかかることがあり、補助金が支払われるのは事業を終えて実績報告を出し、金額が確定した後です。交付決定より前に発注や支払いをした経費は対象外なので、開店前の工事の支払いと時期が合わないこともあります。
特定創業支援等事業の証明書が、融資と補助金の入口になる
創業型の申請に要る特定創業支援等事業は、市区町村が商工会・商工会議所や金融機関などと組んで行う創業塾・創業セミナーや個別相談です。経営・財務・人材育成・販路開拓の知識を学び、受け終えると市区町村が証明書を出します(中小企業庁)。
| 証明書で使えるもの | 内容 |
|---|---|
| 持続化補助金<創業型> | 申請の対象になる |
| 公庫の新規開業・スタートアップ支援資金 | 特別利率が適用される |
| 信用保証協会の創業関連保証 | 通常は事業開始の2か月前からのところ、6か月前から使える(保証限度額3,500万円) |
| 会社設立の登録免許税 | 株式会社は資本金の0.7%が0.35%に(最低額15万円が7.5万円に)。合同会社も同じ率に下がり、最低額6万円が3万円に |
創業塾の日程や回数は市区町村ごとに違います。物件探しより前に、開く予定の市区町村のサイトで特定創業支援等事業の案内を探しておくと、融資と補助金の両方の準備になります。詳しい条件は中小企業庁の資料でも確認できます。
編集部の試算:中央値600万円でカフェを開く場合の資金の目安
ここまでの数字を組み合わせて、全業種の中央値600万円で小さなカフェを開く場合の資金の目安を計算しました。物件の家賃や内装の単価など、公的な出典のない数字は使っていません。統計の平均的な形に当てはめた試算で、カフェの実際の金額ではありません。
| 前提 | 値 | 出典 |
|---|---|---|
| 開業費用 | 中央値600万円・平均975万円(全業種) | 公庫「2025年度新規開業実態調査」 |
| 資格と許可の実費 | 30,300円(東京23区・防火管理者は不要の場合) | 北区・東京都食品衛生協会 |
| 調達の割合 | 借入67.9%・自己資金22.9%・家族や知人など9.3% | 同調査の平均調達額から計算 |
| 項目 | 中央値600万円の場合 | 平均975万円の場合 |
|---|---|---|
| 資格と許可の実費 | 30,300円(約0.5%) | 30,300円(約0.3%) |
| それ以外(物件・内装・設備・運転資金など) | 約597万円 | 約972万円 |
| 自己資金 | 約137万円 | 約223万円 |
| 借入 | 約407万円 | 約661万円 |
| 家族や知人など | 約56万円 | 約90万円 |
試算から見えるのは、資格と許可のお金は開業資金の1%にも届かず、残りのほとんどが物件・内装・設備と運転資金だということです。中央値の規模を平均的な割合で集めるなら、自己資金は140万円前後、借入は400万円前後になります。
持続化補助金を使う場合は、この資金とは別に、補助の対象になる経費を先に払える手元資金が要ります。上限まで使うなら300万円を立て替え、補助金が入るのは実績報告の後です。
実際の金額は、物件と内装の見積もりを取って初めて決まります。公庫の創業計画書の形式で設備資金と運転資金に分けて書き出し、見積もりと並べると、自分の計画が中央値のどのあたりにあるかを確かめられます。
カフェ経営の数字を、開業前に学ぶ
資金計画を立てるには、売上と経費の見通しを自分で組み立てる必要があります。公的な学び先としては、前の章の特定創業支援等事業(市区町村の創業塾など)があり、受け終えると融資と補助金の優遇にもつながります。
カフェに絞った経営の知識を、コーヒーの知識と合わせて学ぶ民間資格には、カフェオーナー経営士があります。試験の内容と独学で取れるかどうかは、カフェオーナー経営士とは?で解説しています。コーヒーソムリエとカフェオーナー経営士は、通信講座でまとめて学ぶこともできます。
カフェの開業資金に関するよくある質問
開業資金を考えるときに出てきやすい疑問に、公式の資料をもとに答えます。
喫茶店の開業資金は、カフェと違う?
公的な統計では区別されていません。2025年度新規開業実態調査の概要は業種別の開業費用を載せておらず、業種の分類も「飲食店・宿泊業」までです。許可も、2021年6月に喫茶店営業が飲食店営業に統合されたので、どちらも同じ飲食店営業の許可を受けます。コーヒースタンドとの違いは、コーヒースタンドとは?で整理しています。
自己資金がなくても、開業資金の融資は受けられる?
公庫の新規開業・スタートアップ支援資金の案内には、自己資金の額の要件は書かれていません。ただ、公庫の創業計画書セルフチェックは、自己資金が少なく借入に頼った計画になっていないかを確認項目にしています。2025年度調査の平均の自己資金は279万円で、調達額全体の22.9%でした。融資は審査で決まるので、計画の段階で公庫の窓口に相談するのが確実です。
補助金で開業資金をまかなえる?
小規模事業者持続化補助金<創業型>は後払いで、交付決定より前に発注・支払いをした経費や、保証金・敷金・仲介手数料・光熱水費は対象外です。対象は販路開拓などの取組の経費で、上限は200万円(インボイス特例で250万円)です。開業資金の柱は自己資金と融資で組み、補助金は開業後の販路開拓の資金として考えるのが、制度の作りに合った使い方だと編集部は見ています。
カフェの開業に必要な資格は?
法令で必要なのは、食品衛生責任者と、建物全体の収容人員が30人以上の場合の防火管理者です。取り方と、食品衛生責任者の講習料の都道府県別一覧は、カフェ開業に必要な資格は2つにまとめています。

